絶対王者の戴冠
はじめに
2022年10月15日、東京ドームシティプリズムホールに於いてラウンドワンがレジャーランドを破り、見事にBPL初優勝を果たした。途中レジャーランドがリードを作る局面もあったが、終わってみれば6pt差とラウンドワンが頭一つ抜きんでた格好だ。
思い返せばBPLS2はこの2チームが常にトーナメントシーンの中心にいた。”絶対王者”U*TAKAを擁する優勝候補大本命のラウワンに対し、昨年と全員同メンバーながらも全員が大幅な実力向上を見せ、”全員野球”で大躍進を遂げたレジャーランド。
U*TAKA選手は2022シーズンを通じて18曲をプレイし全戦全勝と圧巻の横綱相撲を見せた。これをスポーツに例えるならば横綱白鵬の15戦全勝優勝というところだろう。
一見すると”個”の力と”多”の力がぶつかり、”個”が圧倒したようにも思えるが、”挑戦者”を自称するU*TAKAにとってここまでの道のりは平坦なものではなかった。
重ねた敗北
保有する歴代TOP数に7th KAC・8th KACでの優勝という圧倒的な実績、 前哨戦となるBPL ZEROでの優勝もあり、元より期待がとても大きかったU*TAKA。重複指名とくじ引きの結果、スポンサー企業の中でもひときわ存在感のあるラウンドワン所属となった。
しかし、BPLは彼にとって約束された勝利というわけにはいかなかった。2021でラウワンはレギュラーシーズンでこそ圧巻の勝利を見せたものの、ファイナルでは大魔王DOLCE.率いるアピナを相手に辛酸を舐めた。
思い返すとU*TAKAは常に優勝候補筆頭でありながら、6th KACではLICHTに負け、9th KACではKKMに負け、BPL2021ではアピナに負け、と、過去いくつもの敗戦を喫してきた。しかし数々の敗北をバネに、U*TAKAが超人的な進化を遂げてきたことは疑いようがないだろう。
今シーズンの『赫き挑戦者』
“挑戦者”という二つ名を自ら掲げた今シーズンのU*TAKAは、しかしながら”絶対”の存在だった。開幕戦、CYBERXの選曲したWAR GAMEでMAX-1を叩き出すとその後もファイナルまで含めて文句なしの全戦全勝で個人三冠を総ナメにしたのだ。
今シーズンのU*TAKAは本当に強かった、自選はもちろん他選にも一切穴が無かった。周囲からのプレッシャーだけでなく自分自身へのプレッシャーも凄かったのだろう、彼のプレイには文字通り鬼気迫るものがあった。その重責を耐え抜き、チームを優勝まで導く素晴らしい活躍だった。U*TAKA本人は努力をひけらかすタイプではないものの、きっと課題曲全曲を究極までやり尽くしたのだと思う。だからこそ、優勝を決めたあとの涙には際立つ重みがあった。
強すぎる選手がいるとつまらないのか?
ただ今年はそのあまりの強さが故に、「誰がU*TAKAを破るか?」という目線で視聴者は試合を見るようになっていったし、勝ちすぎてつまらないという声も一部では聞こえてきたように思う。
ではU*TAKAが強すぎることは本当にBPLをつまらなくするのだろうか?
私は決してそうは思わない。
現在のU*TAKAには、2007年に横綱になって以来引退まで14年間相撲界の頂点に君臨し45回優勝という前人未到の大記録を残した白鵬の姿が重なる。
白鵬が負けることの方が遥かに珍しくなると(2009年と2010年は共に年間で86勝4敗)、観客は好奇心から白鵬が負けるシーンを期待して観戦するようになるし、強すぎるために意図せずヒール役のようになってしまうことすらもあった。
白鵬、優勝インタビューで涙の謝罪「変化で…申し訳ないです」/春場所
https://www.sanspo.com/article/20160327-KORVPJCTQFJTBEATU5N7NIFQFA/
>取組に館内からはブーイングも沸き起こり、白鵬は優勝インタビューで異例の謝罪も行った。
横綱は、
・真っ向勝負で相手の技を受けて勝つことが当然とされる
・勝つことが当たり前になり負けるとニュースになる
・勝つと強すぎてつまらないと叩かれる
という宿命を背負っている。
勝つだけでなく、勝ち方まで文句を付けられ、勝ち方に品格が無いと叩かれる、本当に辛く孤独な立場だと思う。そして「自分の負けを多くの人が期待している」という状況は、勝利に向かって真摯に努力する本人にとって非常に耐えがたいものがあると思う。
しかし、『白鵬が強すぎて面白くない』と言っていた人たちは白鵬引退後の今の相撲が本当に面白いのだろうか?
やはり時代を代表する伝説的選手が居るからこそ全体のレベルが飛躍的に高まるし、その選手を中心に様々な攻防が繰り広げられることで本当の意味でトーナメントシーンが盛り上がると私は確信している。
(勝手な心配で大きなお世話だと思うが、)U*TAKA選手には何ら恥じることなく堂々と勝ち続け今後も”絶対王者”として君臨して欲しいと思う。
ラウンドワンは個人軍なのか?
実際、ラウンドワンのレギュラーシーズンはU*TAKA個人軍の趣が強かった。鉄人KUREIの不振もあったか、チームが負けた状態からU*TAKAが2タテで逆転してチーム勝利という状況が多かった。
ところがポストシーズンではどうか。特にファイナルではチーム総合力に優れるレジャランを相手に16-10で勝利、特にU*TAKA以外についても4勝6敗で全員がポイントを獲得するなど十分な力を見せた。
レジャランとしては「U*TAKAを倒す/ U*TAKA以外を倒す」、という両方の勝ち筋を視野に入れての大将戦G*選出だったと思うが、ラウワンはその両方を潰した形であっぱれという他にない。もう"個人軍"という揶揄も当てはまらないだろう、チームラウンドワンとして堂々の優勝を見せたと思う。
今後の課題
必然的にU*TAKAへの注目が集まりやすいラウンドワンだが、スター選手と群を抜く実績(準優勝・優勝)があってもチームとしての人気、ファン獲得にはまだまだ課題があるように思う。特に選手ひとりひとりのファンサービスやホスピタリティ、キャラクター性はとても高いものがありながら、チームとしてそのポテンシャルを広く伝えられていない印象がある。
チームとしての広報や配信活動などは、正直何がウケるか分からない(例:クレープの大ヒット)ので、チームカラー・企業カラーとして難しいのかもしれないが、いちBPLファンとしては失敗を恐れずにいろいろやって欲しいなあという気持ちがある。
・さいごに
月並みではあるが長年にわたって野球監督を務めた名将・野村克也氏の、
『勝って騒がれるのではなく、負けて一面に載れ』(敗北がニュースになること、それこそが超一流の証)
という言葉を、"絶対王者"の冠を手にしたU*TAKA選手へのエールとして贈りたい。