戻る


プロリーグ時代の寵児、NORI

Mr.データの二つ名を持つ、NORI選手。
思い返せばBPLZEROはドラフト指名外の補欠からMIKAMO選手の出場辞退で繰り上がり出場を果たすと、BPL2021では4巡目ながらゲーパニ・SILKHATの2チームから競合指名を受けた。BPL2022でもSILKHATとTradzから競合指名を受け、今まで3シーズンのBPLは皆勤賞となっている。2度の競合指名からも分かるように、補欠の座からスターダムを駆け上がりBPLの名物選手となった男だ。

しかしその戦績を思い返すと、
BPLZEROでは4試合8曲をプレイし、”叙情”の1勝7敗に終わると、
BPL2021では7試合14曲をプレイし、2回の”叙情”を含む3勝11敗。
BPL2022では4試合8曲で1勝7敗に留まっており弊サイトのレーティング評価でも全32人中の31位となっている。
4巡目として考えてもやや物足りない戦績であることは否めないだろう、しかしそれでもNORIはBPL時代を代表するプロであり続けている。
今回はなぜNORIがBPLに欠かせないプロとなったのか、考えてみたい。

そもそもスポーツや対人ゲームとは異なり、ビートマニアで”個性”を発揮するのは非常に難しい。結局のところスコアには低いか高いかしかないのに32人分もどうやって個性を出すのだろう。まず32人の中で埋没せず、名前を覚えてもらうことが必要になる。NORIは独特のルックスもあってファンアートにも描きやすそうだし、何より”叙情”という代名詞があったことも良かった。しかし彼がプロとしてBPLを代表する男になった理由はそういった表面的なものだけではないだろう。

“プロ”である以上、ただ単にビートマニアが上手いというだけではその役割を十分に果たすことはできない。
プロがプロであるためには、
1.スポンサーに選ばれること
2.ファンにショーを見せられること
3.そしてファンから応援されること
この3つが必要ではないかと思う。


1スポンサーに選ばれること
プロ制度が未成熟なIIDXにおいて、チーム(スポンサー企業)の広告塔として前に立てる能力が求められている。NORIはBPLで2度の重複指名を受けており、企業からのニーズが高いことが伺える。
NORIはSNSでの発信力や、ビジネスマンとしての経験があるし、不用意な言動をしない慎重さ・クレバーさと誠実さを持っている。まずチームがビジネスパートナーとして求めるものを提供出来ていると思う。

加えて、今回注目したいのはチーム配信を回す力である。チーム配信では誰かが司会進行および聞き手役になることが重要だが、全員が話せるように上手く話を振るだけでなく、まだ話してはいけない未放送の内容については触れないようにしつつ、違和感が生じないようにトークを進めなければならない。
レジャーランドのU76NER選手もそうだが、この2人の元々の頭の良さはトークのコントロールを見れば明らかだし、かつ”下から目線”でそれが自然と出来ることが強みだと思う。もしチームの中で圧倒的なエースがそのように話を振るとすると、(弊サイトの勝手な心配かもしれないが)どうしてもパワハラ感が出て、上司がチーム会で部下の進捗を詰めているようになってしまうのではないか。
「~~さんやっぱり凄いですよね、このときどう思ってましたか?」という自然な聞き役が出来る4巡目は、チーム運営上貴重な存在だと思う。


2ファンにショーを見せられること
BPLは真剣勝負でありながらも、興行としての側面が大きい。つまり見世物として何かの役を演じることが求められている。
BPLZEROでの出場は補欠からの繰り上がりだったものの、補欠を感じさせない立ち振る舞いからも、実力とは無関係にプロの資質を持っていたように思う。ここでの資質とはつまり、自らの役を演じる能力だ。
BPLZERO時代には"Mr.データ"として相手の弱みを的確に突く司令塔としての役割を演じていた(実際にどうかというよりも、そのようにチーム全体で演出していた)。
そしてBPL2021時代には、”青龍塾”の弟子として、SEIRYU選手の指導のもとでメキメキと実力を伸ばす役を演じていた(チームの圧倒的なエースであるSEIRYUの存在をNORIが引き立てていたし、そして実際に実力を伸ばしていた)。
BPL2022時代には新設チームTradzの中で唯一のベテランメンバーとして、チームの案内人という役割を演じていた(チーム配信での進行役は慣れたものである)。
NORIはそのシーズンに応じてチームの中で求められるロールを少しずつ変えながらも、視聴者にしっかりその"役"を果たす姿を見せられていた。


3ファンから応援されること
スポンサーに選ばれ、ファンに自分の役を見せ、そして何よりもファンから応援されなければならない。ファン投票の結果からもNORIの人気の高さは明らかだ。
冒頭にも述べたようにNORIは32人の中で個性が強いメンバーだし、昔から有名な動画(VerfluchtやMare NectarisのEXH動画など、見たことが無い人はいないのではないだろうか)や、BPIの考案などで知名度が高いのも事実だろう。
さらに「本番で何か起こしてくれそう」というワクワク感も重要で、勝ち目の薄い相手でも全力で武器曲を鍛えて臨む姿勢はプロそのものだし、ファンもNORIの活躍を楽しみにしているのだ。
そして何よりも、NORIから溢れるビートマニアへの愛、これが多くのファンに支持されている理由だと筆者は思う。自分の勝利よりもチームの勝利に一喜一憂し(なぜか床に倒れ込む)、どんなファンよりも”ファン代表”としてBPLを楽しんでいる姿を見て、我々視聴者もNORIに感情移入し、つい応援したくなってしまうのだ。


スコアだけでなくプロとしての立ち振る舞いも求められるBPL時代。NORIはBPL時代を代表する一人となった。BPLシーズン3の開催や、その去就はまだ全く不明だが、来シーズンこそは叙情(と罪過の聖堂)を振るうNORI選手の姿に期待したい。